僕が留学時代に学んだ所謂バークリーメソッドは、アヴェイラブルノートのコードスケールによる理論で、ダイアトニックスケールの上に4和音を積み、そこから様々な理論を展開します。

Cadence, Ⅱ-Ⅴなどのコード進行、Tritone Substitution(裏コード)やモーダルインターチェンジなどは全てコードが基になって組み立てられています。

非常にロジカルかつシステマチックなので、学びやすい反面、音楽本来から離れていくことが多いです。さらに「アヴェイラブルノート」= 使える音なので、逆説的には使えない音を作り出してしまうという事です。

これは音楽を作る上で非常にストレスになるものではないでしょうか?こうなる原因はコードから組み立てた理論であることに起因していると思います。

ジャズはコード進行が重要視され、メロディはさほど大事ではないことが多いです(無視して良いという意味ではないです)が、これが原因で「メロディをこうしたいのに、どうやってもコードが合わない」と言うことがよく起こります。ジャズに限らず、ポップスなどでもよく起こることです。

クラシックであれば和声法が確立されているためにメロディとハーモニーに対する厳格なルールがあり、そこからハーモニーが生まれてきます。

和声法はメロディーラインの動きとともにハーモニーの動きも制御しているという事です。ジャズにはメロディに対する理論が確立されていません。それはいかにもジャズらしい発想であると思います。

それと同時にジャズを教える立場にある人間からすると、答えのないものを生徒に教えると言う事になります。ジャズにメロディ理論があると、アドリブはアドリブでなくなり、偶然性ではなく予定調和になってしまいます。

ではアドリブはどのように「習う」のでしょうか?

理論のないメロディをどうやって覚えるのか?という事です。


スケールを学んだところで、そこからフレーズは無数に作る事が出来ますが、結局の所ところ闇雲に動かしてもフレーズらしくならないし、スケールを弾いているのに「間違った音」さえ演奏してしまうこともあります。

そうすると理論通りにやったからと言って必ずしも良いメロディは生まれないと言うことになります。これは「理論を学ぶ」と言うことよりも「技法を学び練習する」と言うことの方が先にあるためだと思います。


「ジャズは習うものではない」


と言う意見も多くあり、僕も一時期はそう思ったこともありますが、それはジャズ理論の限界を「悪」として淘汰していることになるのではないかと感じました。


限界があるのなら「感覚的に正しい」と感じることの理由を考えれば自然と答えが出るんじゃないかなと思うようになり、色んなジャズの曲や理論を分析するようになり、ジャズにはメロディの理論がないと言うことに気づきました。


ポップスには厳格なメロディ理論は確立されていませんが、「ポップスらしく聴こえる」メロディやコード進行も Ⅳ-Ⅴ-Ⅲm-Ⅵm などはポップスに聴こえます。それには理論があるはずです。ここで何度も解説している「テンデンシー」などもジャズよりもポップスなどの方が重要だと思います。
https://www.facebook.com/20805849/posts/10101089944065359/

ジャズの世界に明確なメロディ理論は存在しませんが、「感覚的」にそのような理屈がある事を多くのミュージシャンは感じて演奏しています。
それを何故か考える事は理論を考えるのと同じことです。

チャーリーパーカーを始めとする多くのビバップ時代のミュージシャンはコードトーンを中心にアプローチノートやターゲットノートで音を繋いで行き、終止形から Ⅱ-Ⅴなどを拡張して行き、セロニアスモンクはベース音とメロディの反転を行った結果、ハーモニーの拡張が起こりジャズの理論を広げる事になりました。

僕はバークリーで様々なアドリブフレーズの分析をしましたが、ビバップ時代に形作られたハーモニー理論を系統づけて理論化したものが現在バークリーで教えられており、ジャズ理論の基礎になっています。バークリーの理論のクラスは「Harmony」となっているのはこのことからだと思います。

この時代のメロディを分析すると、ほとんどがコードトーンとアプローチノートのみで説明がつきます。

そう、ジャズ理論の全てはコードに支配されています。

したがってこの理論をポップス音楽に当てはめてもきちんと解説できません。
以前、ポップスで「このコードでこのメロディは違和感を感じる」と言う投稿をしました。これは僕にとって違和感があるとしましたが、メロディ理論があればもっときちんと解説できるのかもしれません。

https://www.ryotaueda.com/2022/03/14-0813-7496/

ジャズやポップスにおいてはきちんとしたメロディ理論がないため、クラシックのようにメロディラインの制限はありません。

しかしポップスもジャズもクラシックの和声法が根底にある事は事実で、そこから脱却したために理論で説明のつかない事が起こるのだとおもいます。

コード進行においてもクラシックでは禁忌とされる Ⅴ-Ⅳをビートルズは使っています。こう言った理論による制限を打ち破って新しい音楽が生まれ、そしてそれをまた理論づけていく。

しかしそれは理論づけると言うよりも、「構造を明らかにする」だけで、理論を組み立てる事で音楽を確立できると言うものではないと感じます。

だからこそ、理論で説明のつかないものがどうなっているかを考えることが面白いのではないでしょうか??

Categories: 音楽全般

植田 良太

植田 良太 ピアニスト・アレンジャー バークリー音楽大学で学んだ理論をもとに現在も最先端の理論を追求したり、独自の解釈で演奏に反映しているが、そのサウンドは非常に感覚的である。 一般的な音楽理論以外にも、現役のプロミュージシャンに向けた実践向けの理論レッスンや高度な楽曲分析、音楽講師の方のためのアドバイスなども行なっている。

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